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トウカイテイオー 「受け継がれる想い④」

第3話 ← ● → 第5話

~最強古馬の壁~

トウカイテイオーは二風谷軽種馬共同育成牧場へ傷を癒しに戻った。
骨折とはいえ、思いのほか元気なテイオーの姿に、
場長の岡本幸広は安堵した。

「コレなら、すぐに以前のテイオーに戻ることができるだろう」

そんな岡本の見立て通り、秋風が吹くころにはトウカイテイオーの
故障は完全に癒えて、以前の軟らかいフォームで大地を駆け回っていた。

 

トウカイテイオーが牧場で帰厩に向けて調整されている頃、
2冠馬不在のままクラシック最終戦の菊花賞が行われた。

レースは超スローペースで行われ直線勝負。
レオダーバンが早めに仕掛けたフジヤマケンザンを一瞬で交わし優勝。
2着は1番人気のイブキマイカグラだった。

結局、春のクラシックでトウカイテイオーに負けた2頭だっただけに、
余計にテイオーの故障が悔やまれることになる。

これで3歳限定戦は終了し、3歳馬は古馬との対戦に突入する。
そんな古馬戦線はというと、1頭の葦毛馬に注目が集まっていた。

オグリキャップが引退すると同時に葦毛伝説を継承するように
現れたメジロマックイーンだ。

前年の菊花賞を制し、
この年の天皇賞・春で「親子3代天皇賞制覇」という大偉業を達成。
宝塚記念は2着に敗れるも、レース振りは負けて強しの内容。
秋初戦の京都大賞典も楽勝し、天皇賞・秋に向かう事になった。

菊花賞の前週に行われた、伝統ある古馬最強決定戦。
ここまで春・秋の天皇賞制覇した馬は、
歴史上、同じ葦毛の怪物タマモクロス1頭のみだった。

メジロマックイーンはそんなプレッシャーを跳ね返すように、
2着プレスクラニーを6馬身突き離し圧勝。
史上2頭目の春・秋天皇賞制覇と思われたところ、
なんと、スタート直後の斜行が進路妨害と判断され18着に降着となった。

その後、ジャパンカップ4着、有馬記念2着だったものの、
ジャパンカップは海外勢が上位を占める中、日本馬唯一掲示板に載り、
有馬記念はダイユウサクの一世一代の大駆けに敗れるなど、
決して古馬最強の座から降りたわけでは無かった。
(それは、後の競争生活が証明するわけだが)

 

かくして、トウカイテイオー不在のまま秋競馬は終わり、
テイオーは4歳になった。

骨折した瞬間から陣営は、目標を天皇賞・春に定めていた。
そして、松元省一調教師は復帰戦に産経大阪杯を選んだ。

3200m走る天皇賞・春に比べ、大阪杯は2000m。
前哨戦というにはあまりにも距離が違いすぎる為、
本番との関係性が乏しいレースと言われてた。

前哨戦の1つである3000m走る阪神大賞典には、
メジロマックイーンが出走してくる。
メジロッマクイーンは菊花賞、天皇賞・春と制していることから、
あきらかにステイヤー気質の高い馬だ。

松元は、トウカイテイオーを中距離馬と見ていたため、
復帰戦をあえて相手の土俵で戦う必要性は無いと判断していた。

かくして、トウカイテイオーの復帰戦は決まった。

調教するトウカイテイオーの背中の上には、名手岡部幸雄の姿があった。
父シンボリルドルフの背中を知る岡部は、戦友が送り出した最高傑作に跨り、
ルドルフと同じ乗り味に驚かされた。

「地の果てまで走ってゆきそうな感じだな・・・。」

 

単勝1.3倍という圧倒的な1番人気に推されたことから、
いかにこの馬の復帰をファンが待っていたかが伺える。

1000m1.05.9という超スローな流れを、
トウカイテイオーは3番手でぴたり折り合っていた。

直線でトウカイテイオーは先頭に躍り出る。

ダイユウサクイブキマイカグラホワイトストーン等の強豪馬が、
必死に追いすがる中、岡部騎手の腕はピクリとも動かない馬なり状態で、
他馬を突き離していった。

ゴールデンアワーに1.3/4差をつけての勝利。
終始馬なりでの完勝劇に、無敗伝説第2章の幕開けを感じさせた。

 

阪神大賞典を大楽勝したメジロマックイーンと、
同じように大阪杯を楽勝し無敗継続中のトウカイテイオー
どちらが強いのか。
連日、2頭の最強馬議論が繰り返された。

これまでの完璧なレース振りと、「無敗」という魔性の言葉から、
テイオー有利という世間の情勢だったが、当の両陣営は違った。

「マックはステイヤーの中のステイヤー。
長距離戦では、トウカイテイオー云々でなく負けてはいけない。」

というメジロマックイーンを管理する池江泰郎調教師に対し、

「テイオーは中距離馬。3200mの舞台では向こうに分がある。
宝塚記念ならまだしも、天皇賞・春はチャレンジャーの立場。」

と、松元は語った。

 

第105回 天皇賞・春

世間の注目を一身に集めた「マック・テイオー対決」。
単勝1番人気は1.5倍のトウカイテイオーだった。

各馬がゲートに入る直前、ちょっとしたアクシデントがあった。
メジロッマクイーン号が落鉄の為、
蹄鉄を打ち替えますので、発走時間が遅れます」
この場内アナウンスに、スタンドはどよめいた。

メジロマックイーンの蹄鉄打ち替えも終わり、
発走予定時刻から8分遅れでスタートが切られた。

メジロパーマーが逃げる中、メジロマックイーンは好位の5~6番手。
トウカイテイオーはマックイーンを見るような形で中団の外目を追走した。

淡々とした流れの中、3コーナーを過ぎたあたりで、
メジロマックイーンが先団を捉え先頭に躍り出た。
タブーとされる「3コーナー仕掛け」を若き天才武豊は敢行した。
「瞬発力は劣るが持続力は負けない」という自信からくるものだ。

トウカイテイオー鞍上の岡部も、ココで置いていかれると、
マックに粘り切られると判断し、それについていく。

4コーナーでは前で粘るメジロパーマーを振り切り、
本命馬2頭の一騎打ちの様相を見せた。

逃げるマックに、追いすがるテイオー。

しかし、そんな光景も一瞬だった。
2頭の差は、どんどん広がっていく。

後ろでジッと待機していたイブキマイカグラホワイトアロー
カミノクレッセが、必死にもがくトウカイテイオーを抜き去っていく。

結果、メジロマックイーンの2連覇が達成され、
はるか後方の5着にトウカイテイオーは沈んだ。

無敗伝説は幕を閉じた。

 

「距離の壁としか言いようがない。」

負けるにしても、ココまで惨敗するとは思っていなかった松元はうなだれた。

さらに追い打ちをかけるように、
トウカイテイオーは再び骨折(左トウ骨掌側面剥離骨折)した。

ただ、程度は軽いもので、
秋競馬には十分間に合うモノだったのが、不幸中の幸いだった。

温泉治療の後、再び二風谷軽種馬共同育成センターへと旅立った。

 

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<参考文献>

『水晶の脚 トウカイテイオー』著:瀬戸慎一郎
『名馬列伝 トウカイテイオー』出版:光栄出版部
『トウカイテイオー 帝王・栄光の奇跡』DVD

 

 

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プロフィール

【k-wind】 競馬を楽しんで10数年。オグリキャップから始まり、 ライスシャワー、ディープインパクトと、 大好きな馬は数知れず。「競馬の魅力とは」 このテーマを日々考えている30代牡です。

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