獲得賞金と収得賞金
今回は獲得賞金と収得(しゅうとく)賞金について書きます。
前回の「階級」で用いられるのが、
この「収得賞金」ですので、
前回の記事が記憶に新しいうちに説明することにします。
ただ、このお話は競馬に興味をもたれたビギナーの方には、
少しややこしいお話です。
競馬を始めればなんとなく分かってくるとは思うのですが、
まだ未経験の場合、イメージがつかみにくいかも。
ですので、できるだけ簡単に書きますが、
今は流し読みでも、読まなくても問題ありません。
馬券を買ったりするだけなら、特に気にする項目でもありませんし。
ですが、競馬経験者でも間違った認識を持っている方もいるので、
覚えていて損はないです。
では始めます。
前回、「クラス分け」はその馬が獲得した「賞金」によって
段階が上がっていく的なことを書きました。
前述のように、その「賞金」というのは「収得賞金」の事です。
ですが、JRAでのこの「賞金」という言葉には「獲得賞金」と「収得賞金」の
2つの「賞金」があります。
獲得賞金
「本賞金(ほんしょうきん)」と「付加賞金」の合計額です。
競馬のレースにおいて、着順により賞金が支払われるのは、
1~5着に入着(にゅうちゃく:ゴールイン)した場合。
それが「本賞金」です。
さらにレースごとに、出走手当などの付加的な賞金が支払われます。
それが「付加賞金」です。
つまり、競走馬が1つのレースに出走した事で
得た賞金すべての合計額の事を「獲得賞金」と言います。
このデビューから今まで得た獲得賞金がレースの「出走権」にも
関係してくるのですが、それはまた別の項目で書きます。
収得賞金
これは下の表を見てもらうのが早いです。
<クラス> | <収得賞金> |
新馬・未勝利 | 400万円 |
500万下 | 500万円 |
1000万下 | 600万円 |
1600万下 | 900万円 |
重賞 | 本賞金の半額 |
※重賞を除くオープンレースは下記表。
●クラス名称の変更。
2019年夏季競馬(6月1日)より、
平地競走におけるクラス分けが変更になります。
<変更前> | <変更後> |
500万下 | 1勝クラス |
1000万下 | 2勝クラス |
1600万下 | 3勝クラス |
※新馬・未勝利・オープンについては現行通り。
“1勝”、”2勝”とついていますが、
実際の勝利数は関係なく、クラス呼称の変更。
収得賞金でクラスを分けるのに変わりありません。
<収得賞金の算入方法の見直し>
2014年度、夏季競馬(第3回東京・第3回阪神競馬)より、
オープン競走の収得賞金の参入方法が定額になります。
<競走> | <算入額> |
2歳GⅢ | 1着:1600万円、2着600万円 |
2歳リステッド | 800万円 |
2歳九州産馬限定 | 500万円 |
2歳上記以外 | 600万円 |
3歳リステッド | 1200万円 |
3歳上記以外 | 1,000万円 |
3(4)歳以上リステッド | 1,400万円 |
3(4)歳以上上記以外 | 1,200万円 |
上表のように、新馬・未勝利を勝利した場合の収得賞金は400万円。
前回の「階級」で、「新馬・未勝利」をクリアしたら次の段階は「500万下」と書きました。
ね?賞金額が500万円以下でしょ。
そのクラスを勝つことにより収得賞金は加算されていくので、
500万下レースを勝った馬は、収得賞金は400万+500万=900万となり、
1000万下クラスへと進めるわけです。1600万下クラスも同様。
晴れてオープン馬(オープンクラスまで上がってこれた馬)になれた場合、
そのオープンクラスのレースを勝てば、本賞金の半額が加算されます。
例:1着賞金が3000万円のオープンレースの場合、1500万円が収得賞金
基本的にレースでの1着馬にしか加算されない収得賞金ですが、
重賞レースのみは2着馬にも本賞金の半額が加算されます。
※収得賞金は概念ですので、本賞金とは別に賞金がもらえるわけではないので注意。
収得賞金額の減額
JRAではこの収得賞金額が半額になるのが1度だけあります。
夏競馬が始まる直前、「4歳馬」のみ収得賞金額が半減されます。
これは、2歳や3歳限定戦で重賞・OPを勝ったものの、
3~4歳以上との混合戦で、全く上位に入着できなくなる馬はたくさんいます。
しかし、なまじ収得賞金が高いので、そのクラスに出続けるしかありません。
極端な例をだしますと、
2歳新馬勝ち→収得賞金400万
2歳OP勝ち→収得賞金800万
2歳OP勝ち→収得賞金800万
この時点での収得賞金合計:2000万円
2歳のOP勝ちしかしていない馬が、
3歳からはずっとOPレースしか出走できないことになります。
おそらく2歳OPを2勝もしているんだから、通用するのでは?と
思う方もいるのですが、通用しません。
基本的に2歳馬は出走頭数が少ないです。
つまり、分母が少ないので能力が低い馬でも上位に来れる可能性は高いです。
それが分母が多くなる3歳以上になると、まったく上位にこれないパターンの方が
圧倒的に多いです。
他にも、自分のクラスで頭打ちになった馬もたくさん出てきます。
そんな馬達を救済するために収得賞金を減らすことにより、
自身の実力に合ったクラスで走ることができるのです。
上記例の馬ですと、収得賞金は1000万円となりますので、
1600万クラスへの出走が可能になりました。
これが、前回の「階級」でチラッと書いた「降級」と呼ばれるものです。
ですので、夏競馬が始まると、各クラスで4歳馬の降級馬がたくさん出てきます。
この馬たちは、1度はそのクラスをクリアした馬ですので、
馬券に絡む可能性は非常に高いので、積極的に狙うのも手です。
なお、500万下から未勝利への降級はありません。
◆収得賞金の具体例◆
例をもう少し出してほしいというコメントを頂いたので、
具体例を挙げて収得賞金の流れを見ていきます。
上の表とも照らし合わせてください。
具体例1.エイシンヒカリ
14.04.26(3歳) 3歳未勝利 1着
400万=400万
⇒500万下クラスに昇級
14.05.18(3歳)3歳500万下 1着
400万+500万=900万
⇒1000万下クラスに昇級
14.06.07(3歳)三木特別(1000万下) 1着
400万+500万+600万=1500万
⇒1600万下クラスに昇級
14.09.28(3歳)ムーンライトハンデ(1600万下) 1着
400万+500万+600万+900万=2400万(1600万以上)
⇒OPクラスに昇級
14.10.19(3歳)アイルランドトロフィー(OP) 1着
400万+500万+600万+900万+1200万(定額)=3600万
14.12.13(3歳)チャレンジカップ(GⅢ) 9着
収得賞金なし
15.05.16(4歳)都大路ステークス(OP) 1着
400万+500万+600万+900万+1200万(定額)+1200万(定額)=4800万
--クラス再編(4歳のみ収得賞金半減)--
⇒4800万÷2=2400万(1600万以上なのでOPクラスのまま)
15.06.14(4歳)エプソムカップ(GⅢ) 1着
2400万+2050万(1着賞金4100万÷2)=4450万
15.10.11(4歳)毎日王冠(GⅡ) 1着
2400万+2050万+3350万(1着賞金6700万÷2)=7800万
降級もなく、順調に階段を1段ずつ上がった例です。
具体例2.ゴールドアクター
13.11.24(2歳)2歳新馬 7着
収得賞金なし
13.12.21(2歳)2歳未勝利 4着
収得賞金なし
14.01.12(3歳)3歳未勝利 1着
400万=400万
⇒500万下クラスに昇級
14.02.10(3歳)ゆりかもめ賞(500万下) 2着
収得賞金なし
14.04.05(3歳)山吹賞(500万下) 2着
収得賞金なし
14.05.03(3歳)青葉賞(GⅡ)4着
収得賞金なし
14.08.02(3歳)3歳上500万下 1着
400万+500万=900万
⇒1000万下クラスに昇級
14.08.23(3歳)支笏湖特別(1000万下) 1着
400万+500万+600万=1500万
⇒1600万下クラスに昇級
14.10.26(3歳)菊花賞(GⅠ・格上げ挑戦) 3着
収得賞金なし
--クラス再編(4歳のみ収得賞金半減)--
⇒1500万÷2=750万(1000万以下なので1000万下クラスに降級)
15.07.04(4歳)洞爺湖特別(1000万下) 1着
750万+600万=1350万
⇒1600万下クラスに昇級
15.10.12(4歳)オクトーバーS(1600万下) 1着
750万+600万+900万=2250万(1600万以上)
⇒OPクラスに昇級
15.11.08(4歳)アルゼンチン共和国杯(GⅡ) 1着
2250万+2850万(1着賞金5700万÷2)=5100万
15.12.27(4歳)有馬記念(GⅠ) 1着
2250万+2850万+12,500万(1着賞金25,000万÷2)=17,600万
降級後、とんとん拍子に収得賞金を重ねていったパターンです。
今回の記事もJRAの賞金体制について書きましたが、
地方では収得賞金がそのまま獲得賞金と同意味の場合もあるので、
それぞれの賞金体制があることもお忘れなく。
~ひとこと豆知識~
降級に関して、ダブル降級というものがあります。
これは自分のクラスから2段階下がるものです。
新馬(400万)→2歳500万下(500万)→2歳OP(900万)ですと、
この時点での収得賞金は1800万円。オープン馬です。
しかし夏のクラス編成で半額の900万円になります。
今までオープン馬だった馬が1000万下のレースに出ることができます。
早い時期に賞金を加算できて頭打ちになった馬ですので、
良い結果が出ることは少ないですが、注目する価値はあります。
理解出来たようでなかなか難しいですね。新馬 未勝利 500万 1000万 1600万 オープン 特別 G3 G2 G1 までの例が欲しいです。
>ササキタツミさん
ページの下部に具体例をだしましたので、参考にしてみてください。