競走馬の怪我と病気 ~怪我編~
2013年5月29~30日にかけて、
2頭の名馬が調教中の怪我により死亡しました。
29日は、2011年の2歳女王決定戦である、
阪神ジュベナイルフィリーズ(GⅠ)を勝利した、
ジョワドヴィーヴル。
30日は、函館2歳S(GⅢ)と京成杯オータムハンデ(GⅢ)の
重賞2勝を挙げたフィフスペトル。
いずれも、Yahoo!のトップニュースで取り上げられていたため、
目にした方もいらっしゃるかもしれません。
特に、ジョワドヴィーヴルは期待を一身に背負ったクラシック戦線も、
骨折で棒に振ることになり、今回が2度目の骨折でした。
血統的な背景からも、この馬の血が残せないことは、
多くの競馬ファンが残念に感じたことでしょう。
あらためて、2頭の冥福を祈るとともに、
今回は、競走馬の怪我と病気について書いていこうと思います。
ただ怪我・病気といっても、専門的な分野から見ると、
数限りなくあるのでしょうが、そこまで書く知識もないので、
一般的な怪我・病気について、説明してきます。
~怪我~
※便宜上、ここでいう怪我は脚元の怪我とします。
骨折
読んで字のごとく、骨が折れることです。
骨を持つ生き物ならどの生物でも起こり得る怪我です。
人間は脚の骨折により命を落とすこは滅多にありませんが、
4本足で暮らす生物の脚の骨折は、命に関わります。
特に競走馬のように体重に対して脚の強度が低い動物は、
一本の脚が骨折することにより、他の脚にかかる負担は、
より大きいものになります。
骨折自体で死亡することは、あまりありませんし、
骨折自体は粉砕骨折等手の施しようが無いようなものでなければ、
現代の医学なら、治癒することは難しくありません。
しかし、その治療の過程で他の脚に負担がかかり、
蹄の中の血液循環が阻害され蹄の内部に炎症をおこす、
蹄葉炎(ていようえん)という病気になってしまいます。
この蹄葉炎は激痛を伴い、治療自体が難しいため、
そのまま衰弱死またはショック死することが多いのです。
よって、重度の骨折と判断された場合、
その馬で殺処分(安楽死処置)が下されるわけです。
これを「予後不良」と言います。
<治療法>
患部にボルトを埋め込む等
屈腱炎
「エビハラ」、「エビ」とも言われます。
上腕骨と肘節骨をつなぐ腱である屈腱の腱繊維が一部断裂し、
炎症を起こす事です。
直接命に関わる怪我ではないが、
一度発症してしまうと、長期休養(半年から数年かかる)が余儀なく、
さらに完治も難しい上に、再発する可能性が非常に高い。
治癒後も、発症前の競走能力のまま復帰できる馬は少ないです。
命は奪われないが、競走馬にとって「不治の病」とされているため、
屈腱炎を発症すれば、そのまま引退する馬は多いです。
<治療法>
患部の冷却、抗炎症剤の投与、幹細胞移植等
ソエ
正式には管骨骨膜炎といいます。
若い馬に多く見られる症状で、骨が完全に化骨していない状況で、
強い調教を行うと、菅骨の全面(人間でいうスネ)が炎症を起こし、
重症になると腫れて、骨瘤状となり激しい痛みが生じます。
ただし、命に関わるほどの怪我ではなく、
逆に競走能力が高いために起こる症状とも考えられるため、
それほど深刻視はされません。
ただし、ソエを発症すると調教を軽めにする事が多いため、
レース前にソエを発症してしまうと、仕上がらない状態のまま、
本番に挑むため、結果が伴わないことが多いです。
しかし、ソエを発症していたかどうかは、
陣営が発表する必要はないため、競馬ファンは、
レースまでの間にソエがあったかを知るのは難しいです。
ですが、パドック等で骨瘤状になっているモノや、
ソエを治療した痕は確認できるため、
もしパドックで馬を確認する場合は、注目してみましょう。
(テレビで確認するのは、まず不可能です)
日本ダービー前のエピファネイアのように、
「ソエ発症しました」と親切に教えてくれる陣営もいます。
で、軽視したら2着に来るって言うね!!
<治療法>
患部の冷却、患部を焼く等
挫跖(ざせき)
走行中に後脚の蹄の先端を、前脚の蹄底にぶつけたり、
石などの固いものを踏んだ時などに、蹄底におきる炎症をいいます。
重度の跛行(はこう:なんらかの痛みにより歩様を乱す事)を
おこしたりします。
裂蹄(れってい)
蹄が乾燥などによりひび割れる事。
冬場に多く見られるが、重症になると蹄が伸びるまで
治療できないため、長期の休養を余儀なくされます。
<治療法>
蹄に油を塗る等
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