競走馬の怪我と病気 ~病気編~
前回、競走馬の「怪我」について書きました。
今回は、競走馬が発症する「病気」について書いていこうと思います。
これについても、前回同様、
専門的な所まで書く知識もないので、
一般的に知られる「病気」について書いていきます。
~病気~
感冒(かんぼう)
人間でいう「風邪」です。
おそらく病気関連では、この言葉が1番よく使われます。
週初めや、レース前日に
「感冒の為、出走取消」
という事は、よくあります。
風邪ですので、重症化することはマレで
治療と休養を経れば元気になります。
疝痛(せんつう)
人間でいう「腹痛」です。
馬はその体の構造上、非常に疝痛を起こしやすいと言われます。
腸管等に原因があるほか、飼養管理ミスや運動不足などでも
発症する危険性があります。
人間でいう「腹痛」とは言いましたが、
腸が変位(ねじれる)をきたす腸捻転(ちょうねんてん)などの、
変位疝(へんいせん)になってしまうと、命に関わってきます。
現役・引退問わず多くの名馬が、
この腸捻転により、死亡しています。
馬インフルエンザ
馬が発症するインフルエンザです。
人間の場合と同じく、空気感染で伝染力も強く、
発熱・呼吸器障害を引き起こします。
昭和46~47年に関東地区の競走馬を中心に大流行し、
中央・地方問わず、競馬開催が一時中止になりました。
余談ですが、このインフルエンザの流行で、
抗生物質を投与された馬の中に、メジロアサマという馬がいました。
しかし、その抗生物質の後遺症なのか、種牡馬として繋養されたのち、
受胎した牝馬がゼロという異常事態に発展し、
廃用寸前まで追い込まれました。
結果、メジロ牧場のオーナーブリーダーであった北野豊吉の執念で、
なんとか19頭の産駒を誕生させ、その内1頭がメジロティターンでした。
そのティターンから生まれたのがメジロマックイーンだったわけです。
つまり、この馬インフルエンザは、
現在、大活躍中のオルフェーヴルやゴールドシップが
誕生していなかったかもしれない一大事件だったわけです。
以後、年2回のワクチンの接種が実施され、
再びインフルエンザが流行することは起きませんでした。
しかし、2007年夏に再び大流行の兆しが見え、
地方競馬を中心に、競馬開催を一時とりやめる事態まで発展しました。
今回のインフルエンザは、競馬開催の中止よりも、
メイショウサムソンなどの競走馬が海外レースへの渡航を
断念せざるを得なくなった事例が多かったのが特徴です。
喘鳴症(ぜんめいしょう)
「ノド鳴り」とも言います。
のど頭部を支配する神経がマヒし、のど頭口が狭くなり、
呼吸のたびに「ヒュウ、ヒュウ」、「ゼイゼイ」と音を発する病気です。
呼吸がし辛くなるため、当然競走能力に大きく影響が出ます。
治療法として外科手術が行われますが、
この手術を行う事で、元の競走の力を取り戻す可能性は高いです。
例として、ダイワメジャーは3歳秋に患った喘鳴症を手術し、
5歳秋には天皇賞・秋を勝つほどの活躍馬になりました。
喘鳴症を患っている馬は雨の日に好走できるという噂がありますが、
喘鳴症は粘膜系疾患ではないため、そのような事実はありません。
しかし、手術後の患部を湿らす効果はあるので、
正確には、
・喘鳴症手術前の競走馬に対する雨の効果 → ×
・喘鳴症手術後の競走馬に対する雨の効果 → △
ぐらいで覚えておきましょう。
鼻出血(びしゅっけつ)
人間でいう「鼻血」です。
ただし、人間と違って鼻のみで呼吸する競走馬にとって、
呼吸がし辛くなく鼻出血は競走能力に大きく影響します。
鼻出血には外傷性のものと内因性のものがあり、
外傷性の場合、傷が治れば短期間で治り再発しませんが、
気道粘膜の毛細血管が切れた場合や肺出血等の内因性のものは、
再発の可能性は高くなります。
かつ、内因性の鼻出血の場合、
回数に応じて出走制限がかかります。
1回目→1ヶ月間出走できません。
2回目→2ヶ月間出走できません。
3回目以上→3ヶ月間出走できません。
よって、内因性の鼻出血が再発することにより、
引退するケースも多くみられます。
伝貧(でんひん)
馬伝染性貧血の略。
馬特有の伝染病であり、ウイルスによって感染します。
観戦すると繰り返し高熱をだし、次第に貧血となり、
痩せ衰えていく病気です。
効果的な治療法はなく、被害拡大を阻止するために、
感染してしまうと、法の定めにより速やかに殺処分が下されます。
昭和初期に、同症状がみられる馬がいたもの、
近年では予防法が確立され、競走馬では1978年を最後に出現していない。
とはいえ、現在でも馬の病気としては
非常に危険な存在であることに変わりありません。
フレグモーネ
皮下組織に見られる急性の化膿性疾患です。
化膿を起こす細菌は、外傷部位から侵入することが多く、
一夜のうちに馬の脚を腫れあがらせ、全身に回るケースもある。
重症化すると、命に関わる病気なので、
早期発見・早期治療が肝心です。
大種牡馬サンデーサイレンスは、このフレグモーネを発端に、
蹄葉炎を患い死亡しています。
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